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おことわり
この記事は、2019年10月にQiitaに投稿した記事を加筆修正したものです。
また、この記事のオリジナルは日本語で書かれています。記事が日本語以外の言語で表示されている場合、それは機械翻訳の結果です。当社は機械翻訳の精度に責任を負いません。
はじめに
前回の記事で、SSDの製品仕様に記載されているTBWについて、その定義と記載内容の意味をご説明しました。
そこでこの記事では「TBWの正体」をご説明します。
まとめ
- TBWは、SSDが搭載するNANDフラッシュメモリに書き込み可能なデータサイズ(=寿命)のうち、定められた条件(ワークロードなど)のもとでホストがSSDに書き込み可能なサイズの最大値
- TBWは、ワークロードやSSDの特徴により、同じNANDフラッシュメモリ、同じ容量でも差が出る
準備:推定寿命
この後の説明のために、SSDが搭載するNANDフラッシュメモリの容量と、NANDフラッシュメモリの保証書き換え回数で計算できる簡易的なSSDの寿命「推定寿命」を定義します。
この「推定寿命」は説明用に導入したあくまで簡易的な値であることに注意してください。
それでは、推定寿命を具体的に計算します。ここでは3D TLC NANDフラッシュメモリを搭載する、当社製SATA SSD SN2S-GPシリーズの960 GBモデルと、NVMe SSD HN8Eシリーズの640 GBモデルを使います。計算結果は以下の表のようになります。
推定寿命とTBWの違い
上記の表のとおり、推定寿命と両製品の製品仕様に記載されたJESD219のクライアントワークロードを用いて算出されたTBWには差があります。どちらも推定寿命のほうが大きいです。
この差が生じる理由は、推定寿命は「SSDが搭載するNANDフラッシュメモリに書き込むことができる総サイズ」でありTBWが「ホストからSSDに書き込むことができるサイズ」であること、です。
SSDでは、ホストから新しく書き込まれたデータ以外にも、様々なデータをNANDフラッシュメモリに書き込みます。例えば、SSDの管理情報をはじめ、SMARTに代表される統計情報、Garbage Collectionでコピーするデータが挙げられます。他にも、リフレッシュなどデータの信頼性を確保する処理により、NANDフラッシュメモリにデータが書き込まれることもあります。
これを図に示すと以下のようになります。
この図の通り、TBWはホストから新たに書き込まれたデータのみを示し、推定寿命はSSDに搭載されたNANDフラッシュメモリに書き込まれる全データを示すため、必ず推定寿命が大きくなるのです。
TBWの正体
これでTBWの正体を説明する準備ができました。
前回の記事で、「TBWとは定められた条件(ワークロードなど)のもとでホストがSSDに書き込むことができるサイズの最大値」である、とご説明しました。
そして今回の記事で、SSDが搭載するNANDフラッシュメモリに書き込まれるデータにはホストからの書き込み以外にも様々なデータが存在することをご説明しました。
この2つから、SSDのカタログ上のTBWは、SSDが搭載するNANDフラッシュメモリの保証書き込みデータサイズのうちホストから新しく書き込まれたデータで消費可能な最大サイズ、となります。
TBWを左右する要因
上図の通り、TBWはSSDが搭載するNANDフラッシュメモリの限られた寿命を消費するいち要素でしかなく、他にもNANDフラッシュメモリの寿命を消費する要素が存在します。
つまり、TBWの大小を左右する要因はTBW以外にSSDが搭載するNANDフラッシュメモリの寿命を消費する要素の大きさである、と言えます(下図参照)。
それらは具体的に言えば、SSDの管理データサイズや、Garbage Collectionで書き込まれるデータのサイズ、さらには信頼性向上のために書き込まれるデータのサイズも含まれます。
一般的に、広いLBA空間でランダムライトを行うとGarbage Collectionが頻繁に行われます。この場合、Garbage Collectionで書き込まれるデータサイズが増え、TBWが減ります。
つまり、同じSSDでもTBWはワークロード(アクセスパターン)に依存します。
またデータの信頼性を特に重視する特徴を持つSSDの場合、信頼性向上の目的で書き込むデータのサイズが増えたり、SSDの管理データ保護のために管理データの書き込み頻度を上げることもあります。このようなSSDでは、SSDの管理データの書き込みサイズや信頼性向上のために書き込むデータが増え、TBWが減ります。
つまり、TBWはSSDの特徴にも依存します。
例えば当社のSSDには、データの信頼性向上や長期安定稼働を実現するための機能を搭載した製品があります。
それらの製品では、使いかたに応じて、信頼性向上を目的としたリフレッシュなどの処理による書き込みデータが増えたり、安定稼働のためにSSDの管理データの書き込みが増える、などが起こり得ます。そのような処理が行われた場合、結果としてTBWが多少小さくなります。
おわりに
この記事では、TBWの正体をご説明し、どんな要因でTBWが増減するのかをご説明しました。
連載の次の記事では、このTBWが小さくなる(減る)使いかた、つまり「寿命が縮まる使いかた」をご説明します。
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記事内容について
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