この記事で紹介している製品
高解像度、高画角、フラッシュ付きのリアカメラを搭載した
点検作業モデル 「堅牢タブレットPC」 リリース
本製品のリアカメラの開発要件を満たす4つの課題
- 解像度1190万画素 :最大11.9MP USB2.0 Camera controller(ISP)採用。
- 広角度レンズの選定 : レンズ画角99.5度、レンズ歪み<4%
- フラッシュ光度500lm : フラッシュICの熱対策によりフラッシュ500lm、トーチ300lmを達成。
- シャッター反応速度の調整(難題!)
この記事ではその中でも一苦労したシャッター反応速度の調整の開発秘話についてお話しします。
高解像度、広角レンズの決定、フラッシュ光度500lm(ルーメン)調整まではまずまず順調。
フラッシュ点灯させた際の撮影も3A(オートフォーカス、オートエクスポージャー※1、オートホワイトバランス)が最適に調整されていることを撮影画像でも確認できていました。
しかし、フラッシュ点灯させない撮影では、どうもシャッタ―反応速度が遅いことに気が付きました。シャッターボタン押してから画像が撮影されるまで1.4秒の遅延があり、しかもシャッター音もタイミングが合っていませんでした。
※1.オートエクスポージャーとは自動露出のことで、絞りやシャッター速度を自動的に制御する機能のことです。
カメラシャッターの反応速度が遅い?
表1 撮影ボタンを押してから画像保存までの遅延時間
カメラライトオンの時はフラッシュが点灯してから、3A(オートフォーカス、オートエクスポージャー、オートホワイトバランス)を調整する時間が必要なので、画像保存までのでタイムラグがあるのは仕方のないことです。
ただし、カメラライトオフの時ではプレビュー画面で3Aが常に働いているので撮影ボタンを押したら、即座に画像をキャプチャして保存されるのが理想です。
発売中の製品、他社製品の画像保存までの時間が0.2秒に対して開発段階の本製品が1.4秒と圧倒的にシャッタ―反応速度が遅いことがわかりました。
撮影画像保存まで1.4秒も掛かっていたら、折角のシャッターチャンスを逃してしまいますよね。
カメラ静止画撮影するまでのフローチャートを見直してみた
開発段階での静止画キャプチャ方法は、ISP(※2) ベンダーのカメラドライバが対応しているUVC規格(※3) のMethod2を採用していました。
Method2はカメラアプリのプレビューでは「ビデオストリーミングモード」になっていますが、撮影ボタンを押すと「静止画イメージモード」へモード切り替えを行います。
モード切り替えすることで遅延が発生し、モード切替後にも再び3Aの調整が行われるので静止画キャプチャして画像を保存するまで1.4秒時間が掛かってしまうことがわかりました。
カメラライトOFFの時にも同じ処理をしてしまうためシャッター反応速度が遅くなっていました。
※2:ISP(Image Signal Processor)とは、映像信号を処理する部分、あるいはその機能を有するIC
※3:UVC(USB Video Class)とは、ビデオカメラやWebカメラといった、主にUSBカメラの通信方法に関する規格
今回の記事ではUVC規格の中でも「静止画キャプチャ」の仕様について記載しています。
思い切ってUVC規格の静止画キャプチャー方法を「Method1]へ変更
UVC規格の静止画キャプチャ方法を「Method2」から「Method1」へ変更してみました。
カメラドライバーをIPSベンダー製からOS標準ドライバのMicrosoft製に変更。
カメラファームウェアもMethod2の機能を持っていないものに変更しました。
その結果、「ビデオストリーミングモード」から「静止画イメージモード」へモード切り替えを行う処理が無くなり、 「ビデオストリーミングモード」のまま、プレビュー画像をダイレクトに静止画キャプチャすることが可能になり、シャッター反応速度を0.2秒に短縮することが出来ました。
シャッター反応速度は改善されたが、どうやってカメラライトを点灯させるの?
Method2方式ではISPベンダーのカメラドライバーとカメラファームウェアで、カメラライトのON/OFF制御を行っていましたが、Method1方式のMicrosoftのカメラドライバーでは、カメラライトが制御できません。
その為、カメラベンダーからカメラライト制御用ツールとソースコードを入手し、自社のソフトウェアチームと協力して、自社アプリ経由でカメラライトON/OFF制御が可能となりました。
次にカメラライト点灯から静止画キャプチャするまでのタイミング(Wait時間)をどうするかが課題です。Wait時間が短すぎると、 3A(オートフォーカス、オートエクスポージャー、オートホワイトバランス)調整が完了する前に撮影されてしまい、ピントが合っていなかったり、白っぽい画像が保存されてしまいます。
逆にWaitが長すぎると、カメラライトが最大光度で点灯しているタイミングを過ぎてしまい暗い画像が保存されてしまいます。ここは実機を使って何度もカットアンドトライを行って検証し、カメラライトが点灯してから3A(オートフォーカス、オートエクスポージャー、オートホワイトバランス)調整が完了するまでの最適値を1000msに決定しました。
結果的に1000msのwaitを入れたことで、カメラライトON時の静止画撮影のカメラシャッター反応速度はMethod2時と同等の1.4秒にすることが出来ました。(機能を低下させることなく対策できました。)
カメラシャッター音も実際に画像保存されるタイミングで「カシャッ」と音が鳴る様にWaitをいれて違和感が無いように調整しました。
おまけ機能
カメラライトに使われているLEDは静止画撮影時は最大500lmでフラッシュ点灯するのですが、このカメラライトは最大300lmのトーチライトとしても使用できます。
カメラアプリケーション「ZEROSHOCKカメラ」を起動しなくとも、「Logitecユーティリティ」アプリから単独でトーチライトを点灯させることが可能で、暗所でも安心して点検作業ができます。
さいごに。従来製品とのカメラ性能比較
解像度、画角比較
カメラライト比較
三脚取付ネジ穴を搭載 ※本製品のみ
タブレットを固定して、よりデジカメ並みの安定した撮影が可能に!
他社商標について
記事中には登録商標マークを明記しておりませんが、記事に掲載されている会社名および製品名等は一般に各社の商標または登録商標です。
記事内容について
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点検作業モデル 堅牢タブレットPC