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エッジコンピュータにM.2スロットを採用
組み込み向けファンレスエッジPC「BXC-TGL」は、ハギワラソリューションズの開発した製品で、初めてNVMeスロットを搭載したエッジコンピュータで、ノートパソコンで主流の M.2 2280に対応することになりました。
基板実装タイプでは、mSATA の採用事例はありましたが、SATAでは最大でも600MB/sで、
自己発熱はそれほど大きくありませんでした。
Tiger Lake世代は NVMe PCIe4.0対応となり、ホストの高速化にともなってストレージ側の高速化も
要求されています。
高速化にともなって、ストレージ側の自己発熱も問題になっていますが、放熱には全く考慮されていない仕様に思えました。
組み込み向けファンレスエッジPC「BXC-TGL」に接続してまずは実施してみる
条件として Windows上で動作する自作プログラムを使っています。
書き込み単位は 1MB単位 Writeコマンドを実行キャッシュ無効に指定、3GBのファイルを作成
したらファイルを削除し、これを繰り返します。温度はストレージのSMARTの値を採用しています。
所々に谷がありますが、これはファイルシステムの更新によるものであり、ストレージのパフォーマンスとは無関係と思われます。
未対策品の検証結果
25分程度経過すると 68℃に達して、温度上昇は一旦止まりました。
パフォーマンスモニターを観測すると、速度低下とアクティブの時間が増加が観測されます。
サーマルスロットリングがSSD内部で実行され、温度上昇が止まったように見えます。
ストレージのBusy時間が伸びている
その影響で極端な速度低下
ヒートシンクを探す
動く、動かないの判断であれば動作していますがプチフリーズに近い現象が起きています。
インターネットで NVMeを検索すると、ヒートシンク付きのM.2 NVMeが結構売られています。
ヒートシンクのキットも売っています。
左:熱伝導性両面テープで接続するタイプ
右:輪ゴムで固定するタイプ
ヒートシンク
熱伝導シート
固定治具
熱伝導シート
ヒートシンク
固定治具
市販ヒートシンクで効果確認
効果確認のため、熱伝導両面テープの接続するタイプで実験開始
SMART で表示される温度は、NANDチップに内蔵されているセンサーの温度です。
発熱するのは、NANDチップだけではなく、コントローラーも発熱するため
コントローラーの熱が伝わって、NANDの温度上昇が加速されたような状態になります。
最高温度に達するまでの時間が早くなり、最高温度は変わらなかった。
ヒートシンク再考
最高温度は、ストレージのサーマルスロットリングにより制御されます。
ただし、プチフリーズが起こる状態での製品リリースはしたくないため、
もう一度、ヒートシンクを再考することにしました。
材料の選定
銅が熱伝導率がいいのは分かっていますが、簡単に試作できないため、加工性も悪く、採用できるコストとは思えません。
市販品のアルミの材質は分かりませんが、熱伝導性が高い高性能な材料でカスタムヒートシンクを作ります。特徴はいろいろあるが今回選んだ素材は
熱伝導率 W/m・K=140
熱伝導率が通常のアルミの2倍程度あります。
カスタムヒートシンクを作って再度検証した。
T=2.0mmの平板を曲げただけだ、対流による熱交換が期待できないので、これで十分ではないか?
L型の曲げを上方向にして検証してみる
改良ヒートシンク検証(1)
今回は効果があった。最高温度は、62℃まで下がり、最高温度に達するまでの時間も稼いでいる。
よく見ると、サーマルスロットリングの影響と思われるパフォーマンス低下が観測されている。
改良ヒートシンク検証(2)
ヒートシンクをL型に曲げたのは、筐体に固定するためです。
筐体と接地させることにより、筐体をヒートシンクの延長として使えないかとの思惑もありました。
今回使用した筐体は、スチールなのであんまり効果はないかもしれません。
筐体に接地させて効果を確認しました。
最高温度は約2℃ほど低下することができ、最高温度に達するまでの
時間を2倍稼ぐことができました。
NVMe 熱対策まとめ
・ NVMe M.2 2280採用時は、何らかの熱対策があった方が、安定的に運用できる
・ 今回の対策で、ノーマル状態より、最高温度を8℃マージンを確保できました
・ 最高温度に達するまでの時間を稼ぐことができました
市販品は今回のシステムではあまり効果が無かったが、システムによって異なるので
採用するシステムで効果的かどうかは、別途検証する必要がある。
本システムを採用したエッジコンピュータ製品は 9月下旬発売予定です。
ニュースリリースは以下よりご確認ください。
組み込み向けファンレスエッジPC「BXC-TGL」ニュースリリース
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