Jetson Orin Nano開発者キットでHシリーズNVMe SSDを使う!

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おことわり

 この記事のオリジナルは日本語で書かれています。記事が日本語以外の言語で表示されている場合、それは機械翻訳の結果です。当社は機械翻訳の精度に責任を負いません。

はじめに

 NVIDIA社の組込み用AIコンピューティングプラットフォームJetsonシリーズには、M.2 SSDを装着可能な開発者キットがラインナップされています。

 このJetsonシリーズが使われるようなエッジデバイスでのAIコンピューティング(エッジAIコンピューティング)ではより大容量でより高性能なストレージの必要性が増しており、NVMe SSDはこの要求に応えられるものと期待されます。

 これまでに、Jetson AGX Xavier開発者キットおよびJetson AGX Orin開発者キットに当社製HシリーズNVMe SSDを装着してJetPack同梱ソフトウェアを使用した物体認識の動作確認を実施した結果をご紹介しました(Jetson AGX Xavier開発者キットの記事はこちら、Jetson AGX Orin開発者キットの記事はこちら)。

 今回はその第3弾として、2023年4月に発売されたJetson Orin Nano開発者キットに同じく当社製HシリーズM.2 NVMe SSDを装着してセットアップし、これまでと同様の動作確認を実施しましたのでその内容と結果をご報告します。

 なお、この記事に記載の実験結果は当社の実験環境で得られた結果であり、どのような環境でもこの結果が得られることを保証するものではありません。ご注意ください。

まとめ

  • Jetson Orin Nano開発者キットに当社製HシリーズM.2 NVMe SSDを装着して、OSを含むソフトウェア群のインストールと基本動作を確認した
  • NVMe SSDの性能と容量はエッジAIコンピューティングに適していると考えられる

NVMe SSDの装着

 Jetson Orin Nano開発者キットは、他の開発者キット同様、Jetson Orin Nanoモジュールと、NVMe SSDを装着するM.2スロットなどを備えたキャリアボードの2つから構成されます(図1)。

図1:Jetson Orin Nano開発者キット全体写真

 Jetson Orin Nano開発者キットのキャリアボードは、Jetson AGX Orin開発者キットと同じくM.2スロットがキャリアボードの底面に実装されています。このためM.2 SSDの装着や交換がとても行いやすいです。

 ただ注意点が3点ありますのでそれぞれご説明します。

片面実装製品のみ装着可能

 Jetson Orin Nano開発者キットのキャリアボードに実装されたM.2スロットは、片面実装品のみ装着可能です。このことはNVIDIAの公式ドキュメント[1]に記載されています。

 今回使用した当社製HシリーズM.2 NVMe SSD 1,920 GBモデルは片面実装ですので問題なく装着できました。

使用するM.2スロット

 Jetson Orin Nano開発者キットのキャリアボードには、NVMe SSDを装着可能なMキーのM.2スロットが2つ実装されています(図2)。短いほうがM.2 Type 2230、長いほうがM.2 Type 2280です。どちらもPCIe Gen3接続可能ですが、M.2 Type 2230のスロットは2レーンまでの接続になります。

図2:Jetson Orin Nano開発者キット付属キャリアボード底面写真

 PCI-SIGが定めるM.2規格[2]においてMキーでは最大4レーン接続可能であるため、市販されているMキーのM.2 SSDは通常4レーン接続可能であり、カタログには4レーン接続時の性能が記載されることが多いです。このため、上記M.2 Type 2230スロットに4レーン接続可能なM.2 SSDを装着してもカタログスペックの半分程度の性能しか発揮できないことがありますのでご注意ください。

 一方M.2 Type 2280スロットは4レーン接続可能ですので、NVMe SSDを装着するのであればこちらのスロットの使用をお勧めします。

 今回当社製HシリーズM.2 NVMe SSD 1,920 GBモデルを、図2のようにType 2280スロットに装着しました。

ヒートシンクは装着不可

 M.2 SSDということで熱対策を検討される方が多いかと思いますが、このJetson Orin Nano開発者キットのキャリアボードに装着したM.2 SSDにはヒートシンクを装着できません。シート状の薄いヒートスプレッダであればなんとか装着可能です。

 これは、Jetson Orin Nano開発者キットのキャリアボードを固定している台座の高さが足りないためです(図3)。NVIDIAの公式ドキュメント[1]にも、キャリアボードの底面側の高さ制限が最大4.30mmと記載されています。

図3:Jetson Orin Nano開発者キットの台座の高さ

 片面実装のM.2 SSDの表面(部品実装面)の厚みは最大1.35mmと定められており[2]、またキャリアボード上に実装されたM.2コネクタの厚みの分もあるため、実際には開発者キットの底面と開発者キットを置いた面との間にほとんど隙間がありません。ヒートシンクは間違いなく装着できませんし、シート型のヒートスプレッダでもとても薄いものでなければ装着できないと思われます。

 またM.2 SSDはキャリアボードの底面側に装着することから、重いヒートシンクを装着するとヒートシンクの重さでSSDの基板が曲がる可能性があります。このため本開発者キットのキャリアボードにおいては、M.2 SSDへのヒートシンクの装着は推奨できません。

 今回の実験では、ヒートシンクおよびヒートスプレッダなどの放熱器具は装着しておりません。

NVMe SSDへのJetPackインストール

 早速キャリアボードにNVMe SSDを装着し、開発者キットにJetPackをインストールします。

 Jetson Orin Nano開発者キットのGetting Start Guideには、microSDカードにJetPackイメージを書き込んでそのmicroSDカードから起動する方法が記載されています。ただ今回もNVMe SSDにJetPackをインストールしますので、User Guideの記述にしたがい作業を行います。

 他の開発者キットでは、NVMe SSDにJetPackをインストールする際に開発者キットをForce Recoveryモードで起動する必要がありました。このJetson Orin Nano開発者キットでもForce Recoveryモードで起動する必要がありますが、特定の押しボタンを用いる他の開発者キットと異なり、ジャンパピンの設定で実現します(図4)。ジャンパピンの詳細はキャリアボードの仕様書[1]をご参照ください。

図4:Jetson Orin Nano開発者キットをForce Recoveryモードで起動するための設定

 このジャンパピンの設定で電源を投入しForce Recoveryモードで起動した後は、他の開発者キット同様SDK ManagerでJetPackのインストールとそれに付随する処理が可能です。

 ここでひとつ注意事項があります。SDK Managerを動作させるUbuntuマシンとJetson Orin Nano開発者キットをUSBケーブルで接続する際にUSBハブを介さず直接接続してください。実験時にUSBハブを介して接続していたのですが、SDK Managerによる開発者キットの検出には成功するもののNVMe SSDへのJetPackイメージ書き込みに失敗しました。

 それ以外には、Jetson AGX Orin開発者キットで生じたエラーに遭遇することもなく、セットアップは順調に完了しました(図5)。

図5:Jetson Orin Nano開発者キットをNVMe SSDから起動した様子(一部画像を加工しています)

NVMe SSD内の動画で物体認識

 今回もこれまでと同様、JetPackに用意された機能を使用してNVMe SSD上に保存した動画の物体認識処理を実行しました。用意されている機械学習アルゴリズムの具体的な名称や特徴および詳細については、GitHub上のドキュメントをご参照ください。

 出力動画から切り出した画像が図6になります。このような認識結果を含む動画が問題なくリアルタイムに作製され、NVMe SSDに記録できました。

図6:Jetson Orin Nano開発者キットによる動画物体認識処理結果(サンプル画像)

 またNVMe SSDに保存した動画2本に対して同時に物体認識を実行し、その実行中にNVMe SSDの温度をS.M.A.R.T.属性から取得してモニタする評価を行いました。動画本数を2本にしたのはJetson Orin Nanoのスペックを考慮したためです。動画はいずれも都内の交通量が多い場所で録画したもので、その仕様は表1の通りです。処理実行時間は1時間(動画をループさせる)、Jetsonの消費電力モードは15Wで実行しました。物体認識処理結果の動画(上図のような動画)もNVMe SSDに書き込み続けている状態での温度取得となります。

解像度フレームレート(fps)動画コーデックビットレート(Mbps)ファイルサイズ動画長
4K (3,840×2,160)30H.264403.4 GB約10分
表1:物体認識テスト用動画仕様

 1秒ごとに取得したNVMe SSDの温度をグラフにしたものが図7となります。

図7:動画物体認識処理中のNVMe SSDの温度(S.M.A.R.T.で1秒おきに取得した温度)

 図7の通り、この実験中にはNVMe SSDの温度は最高で摂氏46度までしか上昇しませんでした。実験後半で温度が低下しているのは、物体認識対象の2本の動画間で多少長さが異なるためにその差が蓄積し片方の動画の処理が他方より早く終了しNVMe SSDへの負荷が減少したためだと考えられます。

 これまで実験した他のJetson開発者キット同様、NVMe SSDの性能があれば、温度上昇によるサーマルスロットリングの発動なしにこのような処理を実行できることが確認できました。

おわりに

 この記事では、NVIDIAのJetsonシリーズのうち最新のJetson Orin Nano開発者キットに当社製HシリーズM.2 NVMe SSDを装着し、NVMe SSDへのJetPackインストール、および学習済みネットワークとJetPack同梱の物体認識プログラムを使用した動画内物体認識を使用した基本動作確認の結果をご紹介しました。

 これまでに基本動作を確認したJetson AGX Xavier開発者キットと、Jetson AGX Orin開発者キットに続き、このJetson Orin Nano開発者キットにおいても当社HシリーズNVMe SSDの基本動作を確認できました。

 エッジAIコンピューティングの計算能力向上と扱うデータサイズの増大に伴い、ストレージに求められる性能やサイズも増しており、ますますNVMe SSDが注目されています。この記事がJetsonモジュールと組み合わせて使用するストレージの選定において参考になれば幸いです。

参考文献

[1] NVIDIA, “Jetson Orin Nano Developer Kit Carrier Board Specification”, SP-11324-001_v1.1, May 2023
[2] PCI-SIG, “PCI Express M.2 Specification”, Revision 4.0, Version 1.0, November, 2020

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